index top 本宮の構造
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注:ここに記載された内容は、空亡著である小説『欲望の守護神』のための設定資料です。
すべてはフィクションであり、実在の個人・団体等にはいっさい関係ありません。
回廊アイコン 回廊
回廊
〈撮影:古瀬和馬〉
 日蛇の木造建築のなかでもっともユニークとされる、舞殿から長く伸びる単廊である。檜皮葺、高欄はないが板敷で、これが敷地の東に位置する浮舞台まで延々とつづく。大きく迂回し、途中の階段までも含めた距離はおおよそ172m。かの有名な厳島神社には及ばぬものの、これほど大規模な、しかも階段まで有する回廊は稀である。その珍しさから、かつては双神池がもっと大きく、今の舞殿はそこに浮かぶ浮舞台であったという解釈がある。その水かさが徐々に減ったので分離した役割をもつ浮舞台が新たにつくられ、減り続けた水を追う形で回廊をも伸ばしていった、というのである。しかし周囲の等高線を見るに、大規模な崖崩れでもないかぎり、そういった可能性は薄そうである。よもや地形が変わったのだとしても、浮舞台を分離させたなら、回廊でなく道を作れば済んでしまう。それよりも中世絵巻での定式、もとは回廊が舞殿を囲んでいたとするほうが無理がない。祭員着座の場、楽所、見所としての利用は、現在にも共通する。それが次第に群衆へと開かれた体勢になるにつれ、ほどけて横へ伸び、より多くの人々が鑑賞できる仕様になったのではないか。現代においても、この回廊の南側はおおむね一般の招待客席とされている。

――「神社としての日蛇」著者:今村忠彦

>日蛇の見解