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無断転載禁止。Reproduction Prohibited.
注:ここに記載された内容は、空亡著である小説『欲望の守護神』のための設定資料です。
すべてはフィクションであり、実在の個人・団体等にはいっさい関係ありません。

マリ 『マリ』
 欲望を狩る神
性別◯女。
身長・体重◯身長129センチ、体重21キロ。
容姿◯全体に華奢。髪、瞳ともに黒。髪型はおかっぱ。肌は色白。
 ロイヤルの欲望によって『完成した神の形態』に偏りを生じさせ、それにより姿を得る。今期の姿が少女であるのは、媒介者であるロイヤルが、無意識ながら『神』を己から最も遠い形態として位置づけたため。また、神が人の姿をしているのは、媒介者が人間であるためで、労せず多くの構築データが手に入るからである。
誕生日◯日本における最初の出現は、奈良時代とされている(日蛇側の記録)。欠落している時期もあるとされる。
血液型◯
特技◯人身には得ることができない、様々な情報、手段を使う。
 『印(シルシ)』と呼ばれる白い幻の僕を制作し、使う。それらを編む様子は、時にアヤトリ遊びに似ている。『印』はさまざまな生物の姿となるが、それは単に動くものとしてロイヤルの知識にあり、マリにとって楽だからである。色付けは、あえてしようとすれば可能、おおよそ形に制限はない。ただし、マリ自身の総質量を超える印はつくれない。
食物◯食物を食べることは可能だが、必要ではない。また、食べた欲望を生存に使うことはない。狩って体内へと収めた欲望は一時的に保管され、眠りによって世界へと還元されるだけである。
他生物への対応◯人間以外の生物に対して、意思の疎通が可能。人よりも動物の方が、性質として欲望(本能)に近い=神に近いため、意思を伝えやすい。ただし、全面的に支配すると、生物側の生存におけるリスクが高まるため、むやみに実行はしない。また、生物によっては、みずからの意思を守ろうとする個体もいる。もっと浅い事柄(感覚や視覚の共有、対話)であれば、必要に応じて簡単にできる。
腕時計◯
車◯
酒への強度◯
一人称◯「私(他、演技により変化)」

>欲を狩るプロセス
1 タイミング(警戒心を緩めさせる、隙をつくる)を図る
2 欲を表面化させ(欲望によってカタルシスを得させる)、その状態を継続し、体内に凝縮させる
3 ターゲットの許可(欲望の諦めをふくむ)を取る
4 外へと逃げられない状態にする
 以上、四つのセオリーがあり、すべて揃えられるのがターゲット、マリともに、もっとも楽ができる狩りとなる。手間がかかる条件だが、あまりにも端折りすぎるとターゲットが死ぬ確率があがり、失敗する可能性へとつながる。『失敗』とは、欲望をつかまえられずに逃がしてしまうことを指す。
 ターゲットの生死に関わらず欲望は体外へと逃げられるが、おおむね生きた肉体には固執する傾向(根本が生存本能であるため)をもつ。また、あえて狩らねばならないほどの欲望は強靭で、精神とともに滅びることなどまず無い。そこで、死とともに逃げる、という図式となる。さすれば物体という制限を失うため、マリであっても完全な捕獲は困難となる。それらは、あらゆる逃避行動(散る・染む・紛れる・解ける・憑く、等)に出る。
 例:他者に憑く→魔がさして人格を無視した行動をおこさせる。こと相性が悪いと、やがてその肉体が破壊される。死せばまた逃げるので、スパンが短く狩るタイミングが困難となる。
   散る→影響は薄まるが、体外ゆえに意外な問題(病・汚染・腐敗、等)に発展するおそれがある。そのように空間・建物・土地、あるいは場(座標)に残り、回収不可能なものは、特殊な条件が揃わないかぎり風化を待つしかない。数百年から数千年の時間を必要とし、さらにときおり突発的に復活することがある。
   その他、極度の特長をもつ欲は、相応に特殊な問題(鬼火・脱水・真空・鎌鼬・爆発、等)を起こす場合がある。
 それら理由から、マリはセオリーを守って狩りを行う。

>周囲の環境(気温、湿度など)への感知
 ほぼロイヤルの体感を通して行われる。マリ自身はそれらを感じる必要などないが、ロイヤルが感じればそう演じてみせる。擬態の一種である。

>周囲の人間に与える影響の傾向
 性的な圧力が少なくないのは、『生物として全くの他者に抱くことが可能な、最大の動物本能的な関心ごと(欲求)』が性欲だからである。母性愛、保護欲、独占欲なども多いが、どれも根本をつきつめれば、同じく『自己の子孫繁栄をめざす本能からくる欲求のすり替え』である。

>存在理由
SECRET.
>化生理由
SECRET.
>世界の万能性
SECRET.
>『人類の集合的無意識』の目的
SECRET.
上記の事柄は、9巻3話(通算35話)までに徐々に明かされる予定。

▽すでに公開されたキーワード

 “欲望”は、生物がもつ先天的能力である。生存に必須で、本能とも結びつく。されど制御こそ困難である。人類も、様々な愚を犯してきた。文明が飽和しての崩壊、権力を奪いあっての戦乱、過密化においての疫病の蔓延、はては血縁を尊ぶあまりの寿命の低下。どれも滅亡する。しかしやがて人口爆発がおき、その滅亡は、地球の滅亡と引き換えるまでになった。そこで“世界”、あるいは“人類の集合的無意識”は窮地を察し、必然性から全知全能たる“神”を生んだ。その出現によって欲望は制御され、世界と人類は保たれている。つまり、神は世界を救っている――という。
(1巻2話 日蛇による定説)


 まず、神が全知全能なら、なぜ手ずから“人を狩る”のか。その偉大なる力ですべてを操るか、さもなくば人類を生来から欲なく作ればいい。また、なぜ化生するのか。神々しく霞、雲、光か、いっそ不可視のまま欲を集めれば、危険も無理も生じない。さらには、媒介者がおらず神が欠落した時代も、このとおり人は滅亡していない。そのうえ現在まで、戦乱も紛争も世界から一掃されない。本当に人類は、救われているのか? 自然淘汰、それ以上に、制御する必要があるのか? なにより狩りは残酷で、乱暴沙汰ともいえる手法だ。相手は財産家・有力者・学者・著名人・知識人・芸能人とした優れた者が圧倒的に多く、ゆえにその後に停滞する研究や企業や産業、法改正もある。これは迫害だ。人類というグローバルからすれば、進化の芽をつまれ、抵抗力を持たぬよう調整されている可能性もある。さすれば“神”や“媒介者”とは、欲望を喰らいたいがために人間社会を監視し家畜化する化物だ。その不老、不死、超常能力に騙されて、太古の日蛇はこれらを神聖化し、敬っただけだ。擁護し、補佐し、長く犠牲者という生贄を捧げてきたのである。
(1巻2話 田桜一樹の疑念)


 そして、それは今や個人の変異ではなくなっていた。“良い”あるいは“楽しい”と感じるものは、理性による善悪でも、生命あるいは遺伝子の存続でも、なくなりつつあるのだ。酒・煙草・麻薬・ギャンブルなどへの依存、肥満・不摂生・美容整形が祟っての成人病。社会が安定して尚ありふれた現実が、人類があらたに抱えた問題をいやがうえにも突きつける。
 より大きな脳をたずさえた“人類”は、生物種として祝福された“野性”を捨てた。しかし、それでも本能という欲求には抗えず追従する。その制御を成しえぬ限り、野生を捨てた意味はないというのに。
(1巻2話 ロイヤルの思考)


 その暁闇には、なにかが閃いていた。引っかかっていたのは、聞き流した榊の台詞だった。
 ――淘汰ってのは、たまたま環境に適合してると生き延びるだけ――
 そう、淘汰とは単純な良環境とりゲームにすぎない。環境や地理や性選択が、時間に作用しておこる自然現象である。そこでは様々な、奇策が用いられている。マンボウは巨大化し数億の卵を産み、シクリッドは口中で稚魚を育てる。クマノミは性転換し、カバキコマチグモは生きながら子に食われる。癌細胞は増えつづけ、ウイルスは頻繁に変異をくりかえす。
 だがそこに、明確な意図は無いのが現状だ。
 かつて先々代は説いた。地球を道連れに滅びぬよう、“人類の集合的無意識”から“神”は生まれた。過ぎたる欲が狩られ、制御されることによって、“人類”と“世界”は保たれている、と。
 矛盾していた。つまり、この欲望を狩る神(マリというシステム)を、意図ある淘汰だというのだ。そして“人類の集合的無意識”が、“欲深き人間を喰らう”というなら、共食いである。これこそ蠱毒とよばれる呪術に、程近い現象ではないか。その歪みを滅亡の回避で飾るとは、日蛇の連中も、ずいぶんと御目出度い頭をしている。
 みずからを喰らいながら人類は、一体なにをしようというのだろうか。

(2巻2話 ロイヤルの思考)