index top 本宮の構造
無断転載禁止。Reproduction Prohibited.
注:ここに記載された内容は、空亡著である小説『欲望の守護神』のための設定資料です。
すべてはフィクションであり、実在の個人・団体等にはいっさい関係ありません。
拝殿アイコン 拝殿


 時代により、規模を増した。今村忠彦氏の見識どおり、この建物は初めから拝殿として造られ、回廊は後世に付け加えられたものである。
 しかし、神聖視されているのは“土地”でも“地中に埋まる柱”でもなく、地下室である“本殿”。様式として大変に珍しいが、かつてその部屋にて榊茂(初代媒介者)を守っていたという伝統から、そのように造られる。当初の神は、必ず榊茂の元へ帰ってくる(降臨する)ので、不動の社殿(掘立柱)となった。“床下の隠蔽”、立入制限、撮影禁止は、おおむね本殿の存在を隠すためである。とくに床下は、排気口等がでているので隠蔽する他はない。
本殿
 拝殿の規模、および建築技術の向上により、規模を増した。拝殿の床に土間を足した床面積をもつ。先の修造のさい、地下は完全に鉄筋コンクリート建築とされた。地面と本殿の間に、地下の照明や冷暖房をになう機械室がある。吸排気は拝殿の後方床下からおこなう。電気は地下ケーブルで引いている。水の供給はない。
 本殿の存在が隠されている理由は、神秘性の保護、さらに非公開神事の保護である。こと神事は悪天候であっても怠れぬものが多く、また、現代のモラルには反するものも含まれる。しかも、それらが出席した神官以外の目にふれることは、宗教理念において厳禁である。そのため、当初は榊茂を隠す目的だった本殿は、そのまま存在そのものを隠すこととなった。また過去には、国政などに止むを得ず違反する場合、一時的に物品(人は不可)などを保管することもあった(例:GHQの刀狩り)。こと現在では人工衛星技術が進んでいるので、別棟でなく地下室だったことは幸運といえる。
 出入りは、拝殿の奥中央にある床扉から行う。扉開閉における電動・手動手段とも、目視できぬよう床や柱の内にカモフラージュされている。また平時であれば、開閉にかかわらず扉の周囲は御簾で覆われている。扉は、左横にスライドして(車輪付き後方を突き出た前方が押す形で)開く。階段は幅2m、右へと下りる。左側1m〜3mの高さの壁に、木彫りの彫刻によるレリーフがある。建物を半周した拝殿土間の直下が、本殿入口となる。
拝殿 拝殿(半地下)
手前には儀式用の、二壁を板扉とする八つの小部屋がある。その奥は、“榊茂の間(入室制限:斎司以上)”とよばれる部屋が一面を占める。中に入るとさらに後方に板扉があり、その先が神座(入室制限:宰神司以上)である。
 榊茂の間から先は、宗教理念において神域と定義され入室制限があるが、掃除などは宰神司直属の正神修たちが“不可視者(あらざるもの)”として担う。また太古からの習わしで、榊茂の間は季節ごとに“榊茂が暮らしているような”支度がほどこされるが、それも彼らが行う。そのための道具、現在では骨董品に類する丁度品や衣類は、左右の宝物室に保管されている。
 神座には、これまでの榊茂・宰神司の遺骨が祀られている。
本殿(クローズ) 本殿(オープン)
 本殿入口から、直接地面に脱出できる避難経路がある。吹き抜けの壁を登る、というロッククライミング並な手段だが、上からの複雑な彫刻が足がかりになる(大勢の場合は縄梯子を下ろした方が無難)。上げ蓋についた鍵付き小扉を開くと、拝殿の正面階段の前に出る。この鍵は双方から解錠が可能だが、許可を得ずにおこなうと防犯装置が作動する。本来、これは建築当初に地下まで資材を下ろした名残りの穴である。正面階段を解体し、鋼鉄製の上げ蓋を外せば、現在でも同様の使い方ができる。



本宮の構造